(株) いけうちは1954年に貿易商社として創業、1961年には広島県呉市に工場を設
立、世界初となる精度保証付きセラミックノズルを開発し、スプレーノズルの製造販
売メーカーとしては60年以上の歴史をもつトップクラスの専門メーカーです。
中国への進出は、2001年に上海に事務所を開設、2006年には現地法人を開設し、
中国企業を中心に業績を伸ばしています。

ゲストスピーカー
霧的池内(上海)貿易有限公司 総経理 竹内大輔 氏
2004年株式会社いけうち入社、2006年いけうち中国法人出向、2014年~現職

世界で初めてセラミックのスプレーノズルを作り始める

——御社の事業のご紹介をお願いします。

竹内 スプレーノズル、いわゆる水や空気など流体の吹出し口を専門につくっている会社です。スプレーノズルを使った様々なアプリケーションを提供しています。製品は主に、工業分野や農業・畜産などの現場で使用されています。半導体・液晶パネルの部品を洗浄したり、製鉄所で鉄を冷却したり、製紙工場で紙を切断したり、食品工場でチョコレートや油のコーティングをしたり…最近では夏場にクーリングのために屋外でミストを発生させたりなど、実に多岐に渡る用途で活用されています。

——創業期についてお話しください。

竹内 弊社は1954年に貿易商社として創業しました。後に広島の呉に工場を立ち上げ、世界で初めてセラミックのスプレーノズルを作り始めました。耐摩耗性や耐薬品性に優れたセラミックのスプレーノズルは、高圧洗浄機メーカーや、農機具メーカーなどに受け入れられていきました。現在は日本に製品ラインの異なる2工場と、ベトナムに1工場を持ち、3工場体制で世界中に製品を供給しています。

——海外展開についてお聞かせください。

竹内 中国以外にもアメリカ、オランダ、台湾、タイ、インドネシア、トルコなどで事業展開しており、ここでも自動車、製鉄、繊維、農業など幅広い分野で製品が使われています。欧米や東アジア地域での展開はすでに10年を超え、各事業体が各地域に根ざした事業活動をしていますが、世界的な潮流としてやはり省エネルギー、サスティナブルということが言われてきていると感じています。
我々霧のいけうちは、地球上の限られた資源をより有効に役立てるため、より小さなエネルギーや少ない水量で、より大きな効果を得られる霧の技術を深めていきたいと考えています。より小さなエネルギーでキレイに洗浄できるスプレー、より少ない水量で効率よく冷却できるスプレー、お客様の生産現場の課題にあった製品を提案することで我々の存在感を出していきたいと考えています。

目標は中国の環境問題解決に貢献すること

——中国事業についてお話いただけますか。

竹内 中国には2001年に駐在員事務所を設立、2006年から現地法人化しており現在では、上海、天津、深センに営業拠点、蘇州に工場兼ショールームを展開しています。常にユーザー企業様の課題を掴めるよう直接販売に重点を置き、営業チームには「課題は現場にある」ということをしつこく言っています。もちろん代理店を通じたビジネスも一定割合ありますが、各代理店とは長期的に信頼関係を築き、代理店の営業員と一緒にお客様に訪問することで、直接ニーズを把握することを心がけています。

——中国事業におけるテーマはなんですか?

竹内 中国での我々の目標のひとつは「中国の環境問題解決に貢献することです」。
近年頻繁に中国の環境汚染に関する報道がなされていますが、例えば中国では石炭焚きの火力発電が大きな割合を占めており、発電プラントの排煙による大気汚染が深刻です。我々霧のいけうちは、スプレーを使った排煙脱硫・脱硝設備の提案を行っており、この分野のニーズが増えています。また、こうした大気汚染を始めとする環境問題など中国独自のニーズに対応するべく、中国蘇州市に組立工場を立ち上げました。日本やベトナムで生産したスプレーノズルを蘇州でユニット化して出荷することで、一品物を短納期で、という中国市場のニーズに対応しています。
このように中国独自のニーズにあった周辺機器やユニット製品、アプリケーションを開発し、付加価値を高める努力を続けています。
また、この蘇州工場は中国におけるショールームとしての役割も持っており、中国国内のお客様が頻繁に来場されます。我々は「霧」を売る会社ですので、「この霧の粒子は何ミクロンです」「流速は何メートルです」と言ってもイメージしづらいですよね。そこで蘇州工場では、スプレーの霧をデモンストレーションしたり、使い方をトレーニングしたり、体験型ショールームとして存在感を発揮しています。

良品のみをお客様に届けるというプライドを持って仕事を

——製品の精度保証をされているとお伺いしています。

竹内 御存知の通り、中国は模倣品が多く、我々の業界でもそれは同じです。
そういった環境の中で精度保証、つまりカタログどおりの製品が出荷されていますよ、ということが大きな意味を持つと考えています。例えば、液晶パネルの生産工場では、パネルの洗浄工程で生産ラインあたり何百から何千個という数のノズルを使います。その際に、穴の大きさがバラバラであったり、噴射しなかったり、つまりカタログ値どおりのスプレー量・スプレー角度が出ないとなると良品が生産されず、生産ラインが安定しません。精度が保証されていないスプレーノズルを使用して問題が起きた場合、数百個のスプレーノズルという部品を現場でひとつずつ確認しなくてはいけなくなります。
逆にスプレーノズルに問題がないことを保証されている場合、問題が発生したとしても原因の特定が容易になります。このように、スプレーノズル自体は比較的安価な部品ですが、お客様の生産ラインの中でキーファクターとなる部品ですので、精度のよいものを使いましょうということを提案しています。

——品質管理方法が他社とは違うということでしょうか?

竹内 弊社では約4万種類の製品ラインナップがありますが、性能検査の方法・基準を品種ごとに設定しています。また自動化が難しい検査については、一定の基準を設けて社内教育にも力を入れています。
ベトナムと日本の工場との間で人的交流をはかり、海外工場においても人を通じて霧のいけうち品質を担保しています。霧の噴射パターンの良し悪しを見分け、良品のみをお客様に届けるというプライドを持って仕事をしています。

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社内外に霧のいけうちファンを増やす

——中国ビジネスにおいて心がけている点を教えてください。

竹内 弊社ではここ数年採用を拡大していることもあり、社歴の浅いスタッフが多くなっています。そこで、社歴の浅い若いスタッフを育成・フォローするしくみにも力を入れています。集合研修や部門ごとの勉強会、メンター制度などのしくみとOJTをバランス良く実施することで、若い社員も安心して働ける環境づくりを目指しています。そうして成長した中国人の社員が活躍して、業績を大きく伸ばし、公平な評価制度のもとで働きがいや金銭報酬を手に入れる。社員の満足度向上とお客様の満足度向上は両輪です。社員が最大限に自分の力を発揮出来て好循環が生まれる環境づくりをすること、それが現地法人の責任者である私の仕事だと考えています。

——社内イベントにも力を入れていらっしゃいますよね。

竹内 目標共有や社員間の交流を深めるために食事会や全体会議を実施しています。全体会議では丸一日缶詰で会議をし、会社のミッション、方針、今後のあり方などを共有します。そして会議のあとにはお待ちかねの飲み会ですね。こちらは若手社員がプログラムを企画してワイガヤでやっています。
今年は工場での生産実習なども計画しており、実際に油まみれになって、フライス盤を触ったりすることで、自社製品に対する理解を深めてもらいたいと考えています。
また、日頃お客様と接していない管理部門や製造部門の社員も自社製品がどう社会に貢献しているのか、ということを理解して、自社製品に誇りを持ってもらいたい、という思いから、現場で撮影したビデオやお客様のインタビューなどを紹介したりもしています。社内向け広報ということで、社内報を通じて各部門の社員紹介なども実施しています。

——企画部門を新設されていらっしゃいますよね。

竹内 少し前に企画・販促部門を設立しました。「社内外に霧のいけうちファンを増やす」というミッションをかかげ、お客様向けのWEB、販促物・カタログから社内報、社内ポスターの作成など、多岐に渡って活躍してもらっています。以前は他部門の社員が兼務していたこれらの業務を専業化することによって、スピーディに販促や社内外への宣伝広告を実施できるようになりました。
まだまだ試行錯誤中ですが、例えば微信(WeChat)の公式アカウントで公開している採用募集やインタビュー、ライフハックのようなコンテンツを社員自身の微信朋友圏(WeChat Moments)に転載してくれたりと社内での注目度も高いようです。

マーケティングは展示会や雑誌媒体中心からWEBにシフト

——採用活動やマーケティングにWEBを積極活用されているとお聞きしておりますが。

竹内 例えば採用活動では、就職情報サイトを活用していますが、募集要項を細かく記載し、先輩社員インタビューや社内活動の紹介写真などコンテンツを充実させることで以前より応募数が増えました。インタビュー動画などは社内で制作しているのですが、素人っぽさが逆に応募者を安心させるという面もあるようで、なかなか評判がいいようです。
マーケティングにおいては、以前は展示会や雑誌媒体中心に露出していたのですが、展示会の来場者がある程度固定化され、新規開拓という意味では費用対効果が悪くなっていたため、出展回数を絞り、WEBにシフトしています。

——具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。

竹内 自社ホームページの運用、BtoB向けECサイト「阿里巴巴1688」での販売、微信(WeChat)公式アカウントでの情報配信、百度リスティング広告などを実施しています。
また、業界のポータル専門サイトに記事広告を掲載し、同時に自社ホームページでも同様の記事広告を掲載したり、微信(WeChat)で拡散したりというようなことを実施しています。記事広告が掲載された雑誌を、営業員が営業ツールとして配布・紹介する、ということもやっています。

自社ホームページや阿里巴巴1688を通じて、ほぼ毎日問い合わせが

——WEB活用の効果はいかがですか。

竹内 自社ホームページや阿里巴巴1688を通じて、ほぼ毎日問い合わせがあります。名前や会社名を教えていただけないことも多い反面、新規契約につながる問い合わせも一定割合あり、玉石混交と言えます。仮説、実施、検証のサイクルを繰り返すことである程度問い合わせ件数増加につながっており、引き続き力を入れていきたい課題のひとつです。
弊社製品は、一度の訪問では成約とはなりづらい製品なんですが、一度取引を結んだお客様はリピーターになりやすい特徴があります。WEBを通じた問い合わせ情報をプールし、定期的にコンタクト、フォローし、顧客化するというプロセスをある程度仕組み化しようとしています。

——微信(WeChat)の活用状況はいかがですか。

竹内 微信(WeChat)のフォロワー数は、現在500名から600名くらいで、フォロワーの獲得は、主には、営業スタッフがお客様へ訪問した際や、展示会などでノベルティを配布しながら獲得しています。今年は社員の提案で、営業員が期間内にどれだけフォロワーを獲得できるかを競うコンペを実施し、優勝者を表彰したりしました。微信(WeChat)の投票機能を活用して、営業員がお客様に、是非私に投票してくださいとアピールをするなど、非常に盛り上がりました。
今後は獲得したフォロワーを飽きさせないコンテンツやイベントを定期的に配信したり、さらにフォロワーを増やし多面的にお客様に情報提供する場にしていきたいと考えています。

スプレーノズルとその応用分野でNo.1の会社に

——今後の中国事業の目標や展開などをお話いただけますか。

竹内 やはり「霧」をテーマに、スプレーノズルとその応用分野でNo.1の会社になろう、ということを目標にしています。
まずは先にお話したような環境分野での提案力を強化していきたいと考えています。中国は国土が広いぶん、市場も課題も大きい。これまで日本を始め世界で蓄積してきた環境分野での経験・知識をベースにしながらも、中国独自の市場環境にマッチした提案をしていきたい。環境改善、省エネルギー、サスティナビリティ、こうしたキーワードを軸に中国の産業発展に貢献していきたいと考えています。
そうしてある程度事業規模を拡大し、社員のキャリアの発展空間(リーダーポジションの数)を確保することで、社員が夢を持てる環境をつくりたいと考えています。仕事でチャレンジし、利益を生み出すことが、スキルアップや働きがい、金銭報酬として直接社員自身のより良い将来につながる、そんな会社を目指したいと考えています。

 ——最後にユーザーの皆様へPRがございましたらお話ください。

竹内 霧のいけうち中国も、中国市場で奮闘されている企業各社様と一緒に成長していくことを目指しています。
霧を使った環境改善、省エネルギー対策、節水対策などのご用命がございましたら、是非お気軽にお問い合わせください


霧的池内(上海)貿易有限公司
住所:上海市静安区恒丰路600号机电大厦21楼C区
TEL:(021)6140-9731
FAX:(021)6123-4239
URL:http://www.kirinoikeuchi.com
E-mail:mist@kirinoikeuchi.com

霧的池内阿里巴巴官方旗艦店
http://kirinoikeuchi.1688.com/

微信(WeChat)公式アカウント
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